過去の出来事への怒りや悲しみが、突然沸いて来ることがある。
私は最近ブーケトスに対して、改めて怒りを感じている。
ご存じかと思うが、ブーケトスは結婚式の定番プログラムの一つである。
新婦が後ろ向きになって、独身女性に向けてブーケを投げる。そのブーケを受け取った人が次に結婚できるという趣旨のものだ。
由来については諸説あるとのことだが、14世紀イギリスから始まったとされている。
20代の頃、数回だが結婚式に参列し、そしてこのブーケトスに参加したことがある。
進んで参加したわけではない。致し方なく参加していた。
私は幼少の頃から結婚願望が無かった。一時期は「絶対にしたく無い」と思っていたくらいだ。
なのに独身女性というだけで、結婚願望があると見做されることが嫌だった。
ドラマやアニメのブーケトスのシーンもその気持ちを強くさせた。今では時代遅れと一蹴されそうだが、「結婚したくてしたくて堪らない女が、恥も外聞も捨てブーケに群がる」そんな描かれ方をすることが度々あった。
ブーケトスに参加する女たちは、まるで見せ物だ。
男性社会の中で、恋愛至上主義の中で、結婚して一人前という価値観の中で、その中で「普通」とされる人たちのための見せ物としての独身女性。
あまつさえ、私は結婚を望んでいないのに、「結婚をしたい女」として見せ物にされることの理不尽さが耐え難かった。
「そんなに嫌なら参加するなよ」と思われるかもしれないが、私にだって人並みの社会性がある。
友人の晴れの日に、晴れの場が白けたムードになるなんて、微塵も望んでいない。私自身が「ノリが悪い奴」扱いされる可能性もある。行くも帰るも地獄なのだ。(これはちょっと言いすぎた)
本稿を書くにあたって、ブーケトスに関して簡単に調べてみた。
結婚情報誌として誰もがその存在を知る「ゼクシィ」の調査によると、未婚女性の半数以上がブーケトスの参加に抵抗があると答えている。
私だけでは無かったのだ。
そのようなこともあって、現在では、未婚に限らない、女性に限らない、ブーケではなくお菓子を投げる…などなど、ブーケトスの形も変化しているらしい。
新郎新婦は少しでも参加者に楽しんでほしいと、式のプログラムを四苦八苦して考えている。そして、式場もそれに応えるプログラムを考えて提供する。
私を苦しめたブーケトスも、本当はシンプルな「楽しんでほしい」という気持ちからであったはずだ。
こうやって書くことで怒りもぶちまけたし、色々知ることで、私のブーケトスへの怒りが昇華されていくようにも感じる。
あ、でも、ある結婚式でブーケトスに抵抗感を示した私に「参加しろよ」と言ってきた男。
おまえのことは許さない。
当時の私には言えなかった「テメェが参加すれば?」という言葉を、時を超えて心の中でぶつけてやる。